通訳のお仕事

通訳のお仕事

最近クライアント様の中で「言葉だけでお仕事ができるとは知らなかった」といった人がいました。こういうことを言及される方は特に日本人に多いです。外国人に言われたことは全くありません。お仕事の内容は医療業界のGMPで独・英・日の逐次・ウイスパリング通訳でした。大抵の人が、通訳は「言葉だけ」と思っているようです。私も最初はそう思っていました。通訳業を始めたのは1998年、ドイツに来て3か月で突然通訳のお仕事が入りました。この時はDSHというドイツ語試験に受かったばかりでした。DHSという試験はドイツの大学で勉強するために必要なドイツ語レベルを確認するためのテストです。このテストに受かっても、まだまだドイツ語でドイツ人と一緒に勉強ができるレベルではありませんが、通常1年ぐらい勉強して、取得する人が多いと思います。ドイツ語はまだまだ未熟であったことはお恥ずかしいのですが、ビジネス日本語や社会の常識も全く知らず、「会社仕組みとは何か」ということも知らず、「ただドイツ語ができる日本人」ということで、通訳のお仕事が回ってきたのです。当時のライプチヒではあまり通訳のお仕事をする人がいっぱいいたわけではなく、私のようなドイツ語もまだまだの者が通訳ができた時代でした。今考えると当時の準備の仕方も「的外れ」で、最初は私にとっては大学に行きながらの「アルバイト」でした。通訳料金も「アルバイト料金」でしたので。でもお客様にとっては、多額の経費を出しての出張なわけですから、(通訳の選択に対してあまり重要性を置いていないことには疑問を感じる)実際にコミュニケーションが取れないとすべてむだになってしまいます。そんな中、毎回専門分野で、環境保護、特許の契約、狂牛病などなど、日本語でもよくわからないものばかりでした。一番難しいと思った通訳のは、市長のスピーチの逐次通訳でした。スピーチはいろいろ考えて書かれたものを読み上げるものでしたので、スピーカーはとてもスムーズに話すのですが、「起承転結」を教えていただいていない、まして初対面のアマチュア通訳にとっては、とても難しいお仕事でした。でもお客様は、「ただ訳してくれればいいから」といいます。通常お願いするときは「簡単なお仕事」といった感じでお話が来ます。それからいろいろ経験をして、今年で17年目です。まだまだですが、少しずつ準備の仕方から、打ち合わせの重要性、通訳の時の場所から何から自分なりのベストな方法が分かってきました。製造関係のお仕事が多いので、The Goal(DrEliyahu M. Goldratt)、トヨタ生産方式(大野耐一)などなど独日英仏語で読みました。またフリーランス通訳の場合、ドイツではEinzelunternehmer、フランスではprofession libéraleを立ち上げなくてはいけなかったので、手続きから確定申告まで全て自分でやるわけですから、規模は小さいですが、「会社の仕組み」がわかってきました。こういった経験も通訳のお仕事には大変役に立ちます。毎回準備には時間をかけます。ホームページの関連のあるところををすべて読むのは基本です。その業界の人と同じレベルの知識があって初めて本当はいい通訳ができると思いますが、それは難しいことです。時間が許す限り準備をします。それで当日スムーズに通訳がいくと、お客様から「言葉だけで・・・」といわれます。これはサッカー選手でたとえたら、PKの時と同じです。観客はその一瞬しか評価しませんが、その裏にはトレーニングがあるのです。

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